ネット上の博物館

 久々にネット上からネタを。昨日付け毎日新聞にて、こんなネタがありました。


むなかた電子博物館:インターネットで鑑賞 全国で2番目


 要するに、ネット上に博物館を展開しようと言うものです。サイト(http://d-munahaku.com/)を拝見すると、工事中の部分はあるようですが、なかなか充実しているようですし、レスポンスも非常によいので、利用も現実的にみえました。ただ、これを作る職員さんが大変なんだろうな〜、などと思ってしまいました。


 というのも、こういう試みは、博物館のみならず各所で行われていて、特に調べてはいませんが、自分の知っている範囲で挙げてみると、
文化遺産オンライン(http://bunka.nii.ac.jp/jp/
ひょうご歴史ステーション・ひょうごの祭りと芸能(http://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/historystation/festival/index.html
宮城県図書館・叡智の杜(http://www3.contents-jp.com/miyagi_lib/
といったところが最近の刺激的なプロジェクトでしょうか。収蔵資料を中心に画像の紹介等を行っていますし、フラッシュなどをつかって自由度を増した閲覧が可能になっています(文化遺産オンラインはちょっと違いますが)。
 特に兵庫県博は展示とも連動しているようで、すごいです。ただ、兵庫も宮城も自分の環境(Bフレッツ100M、99年製win)ではたぶんマシンスペックとして閲覧が厳しいです。この点でも紹介した宗方のサイトは優秀ではありますが。


 ただ、これらのサイトを見ていて常々思うのは、今後どうするのかな〜、というところです。どこもお金が非常にかかっている印象です。
 というのも、自分の博物館もこういう活動をしたいな〜とは思うのですが、結局行き着くところはお金になってしまいます。もちろん自分の努力でなんとかなる部分はあるのですが、永続性を考えると、どうなのかなという気が。
 今ある資料は全部デジタル化をします。高精細で。という場合、今後の資料はどうなるのでしょうか。説明が足りなかった部分を事後に補うのはどうすればよいのかな。というところです。
 自分の博物館のHPでも、いくつかの部分は業者の作り込みで、ここはトラブルが起これば*1自分たちで手を下せませんし、そもそも公開の条件もまた自分たちで後日修正することが困難な状況にあります。つまり、現状のシステムで想定していない資料の公開はまた別システムを構築するしかない状況にあるのです。
 こういう点で、あるまとまったパッケージならよいのですが、永続的なサイトの運営という面では非常にこころもとないのではないでしょうか。
 最近、現在の技術を使ったさまざまなネット上の公開が行われていますが、自分の仕事と関わらせると非常に背伸びをしているというか、将来からみると中途半端な公開にしかならないような公開が多いような気がするのですが。
 よいしょじゃないですが、id:soishidaさんのところで公開されている”どうぶつたちのプロポーズ大作戦!!”展の電子図録(http://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/tokuten/2004sp/catalog/cover.html)は非常に興味深いです。まず、コンテンツの追加を気にしなくて良い点、動画を図録化出きる点、さらには個々のコンテンツは図録から切り離して再利用が可能であるという点から実績として評価できると思います。これは国立科学博物館の特別展のコーナー(http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/index.html)などにもつながるとは思いますが、あちらは少し凝りすぎていて重すぎるのは欠点だと思います。やはり、職員レベルで自由にHTMLを記述できるようなサイトの構築が一番ではないでしょうか。もちろん、永続的にこうした活動に理解のある館の運営があり、一定以上の部分について予算が付くのであれば別ですが。


 博物館の電子化って、どうしても永続的なデータベースの公開になりがちなのですが、これは不断のメンテナンスが伴い、発案者がいなくなると維持しきれなくなる傾向があるように思います。別にさまざまな試みを否定しようというのでありません。ただ、現在の特に公立博物館の取り巻く状況を考えると、将来拡張できる仕組みを作ると、かえって発展しないシステムが構築され*2、逆に放置されるだけになりがちなような気がします。
 もう少し、委託をせず、自力で出きる範囲での電子化をしていく必要があるのではないでしょうか、
 このご時世、自力でできる部分が非常に大きいネット上の公開は必須な状況であることも実感しています。もう少し地に足の着いたネットの利用を考えなくてはと考えている所での、上記の記事だったもので。たぶん、予算が少ない中で公開する方策としてこういうバーチャルミュージアムが発想されているような気がします。それは箱モノの博物館を作るよりも安上がりで当面確実ということが執行部の中で描かれたからのような気がしてなりません。ただ、この方向は今後を考えれば逆に不幸になるような気がします。なぜなら、新たに公開すべき資料が発見されてもそれが公開されることがない可能性が高いからです。もちろん自前で作成したシステムならなんとでもなるような気がしますが、最近のメジャーなネット上のバーチャルミュージアムは技術に頼りすぎていて、今後のことが考えられていないような気がしてなりません。
 そんな中、さて、自分はどんな活動ができるのかな。もう少し考えていきたいと思っています*3

*1:実は現在も起こっているのですが…

*2:これはデータが増えないというだけではなく、始めに作ったデータ形式に引っ張られて以後のシステムの構築の妨げになるという面もあると思います。

*3:いや、まさに上記のようなことが起こっているのですよ。過去のシステムの無視して新しく自前で作れば、それでも良いのですが、それはそれで許されるのかな〜、などと考えると、どんどん発想が狭められていく気がしています。どこで断ち切るかですね〜。