資料データベースと公開

以前、id:soishidaさんのところに若干のコメントをして(id:soishida:20040514)、その後仕事の面からもちょっと博物館資料データとその公開について考えてみました。
たぶん、収蔵している資料のリストをしている博物館なら、多くがエクセルなどで作成し、運用してることと思われます。私の職場でも日常の管理や検索はそうしています。
一方で、博物館にどんな資料が収蔵しているのか、ということを公開することが求められています。写真と年代、若干の解説が付される形でホームページ上から検索できるようになったいることが多いようです。
人文系の博物館ですと、考古資料や美術資料などは報告書や展示図録などで活字化されていることが多く、こうしたデータベースでは、写真と、作者名、年代等のデータがあれば、ひとまず伝えるには十分なデータとなるようです。
これが古文書資料の場合、どんな古文書が収蔵され、どのような内容なのか、名称だけではわかりません。古文書の管理は原所蔵者の名から「鈴木家文書」などという名称で管理しますが、この鈴木さん(仮)がどのような家か、大名なのか、武士なのか、名主なのか、それとも名もない家なのかわからないわけですね。もちろんタイトルからでは内容もわかりませんし、できれば全文活字化するのが一番利用できる形での公開になる資料だと思います。
同様に民俗資料の場合、農具を例にとると、鍬、という資料があります。これは地域ごとの偏差が非常に大きく、鍬があるということでは収蔵しているとはいいきれないわけです。外部の人がこの資料がどんな意味があるのか、ということを伝えるには、柄と刃の角度とか、刃の長さとか、柄の長さとかそういう情報が必要になるわけですね。とうぜん鍬以外では角度などは必要ではなく、また別の必要な情報があるわけです。

なぜ、こんなことを考えるかというと、文化遺産オンライン(http://bunka.nii.ac.jp)という文化財関連のポータルサイト文化庁の肝いりで開設されたからです。このページは、博物館の所蔵データベースのデータを加工し、写真込みで文化庁に送り、公開してもらうところです。ここで集められるデータは、主として美術品と考古資料、歴史資料等の指定物件が中心なのですが、民俗資料も出せ、ということで出しています。ただ、歴史資料の中心である古文書の場合、写真を公開することの意味も大きいのですが、それ以上に活字化する方が価値のある情報になりますし、民俗資料についても、単品で説明できる資料もあれば、先の鍬のように、一定のルールでデータを公開した方がよい場合もあります。

こうしたデータは一般にメタデータというそうですが、メタデータの項目を細分させすぎれば、データの集積がうまくいかない(イレギュラーに対応できない)ので、なるべくシンプルに、というのが一般的なようです。もちろん担当者として、細かい部分が多いと困るので、なるべくシンプルにしてもらいたいのですが。では利用する視点ではどうなのかな、と思うと、あくまでも一般の歴史・文化フリークの人々がちょっと調べる以上のデータの蓄積にはならないような気がします。また、解説文でそうした細かい部分を処理するのが一般的ですが、鍬一つ取っても重要を考える部分が研究者レベルでも違うのに、それを以心伝心で全国の学芸員がデータを作成することは難しいと思います。
ポータルとして、こうしたページがあるのはよいのですが、もう少し本格的に調べものをしたい人(別に研究者だけではなく)、また伝えたい各博物館からの情報を伝えられるような、より詳細な情報提供についても考えていく必要があるような気がします。

まあ、文化遺産オンラインにしても一つの実験的な試みという側面がありますし、データの蓄積・公開方法については徐々によくなっていくのだと思います。
ちょっとまとまりがないのですが、そのうち続きを書かせてもらいます。