スローフード運動

ネットを見ていたら、こんな記事がありました。
内田樹の研究室
大学のゼミにてスローフードとファーストフードの関わりの発表を聞きながらということですが、

(前略)
食の「マクドナルド化」現象と、それに対してヨーロッパで起きた「スローフード」運動の対立構造を、グローバリゼーションとそれへの反動という図式でとらえようという、わりとわかりやすいお話である。
とはいいながら、さっぱり話がわかりやすくならないのは、
(略)
いまひとつは、スローフードという運動がイタリアのピエモンテに発祥したということを聞いた瞬間に、「ピエモンテ?うーむ、それはちょっとやばいかも」という反応をしたせいである。
(略)
ちょっと待ってね、とタイムが入るのは、このスローフード運動の発祥と同じ頃に同じピエモンテでどういう政治運動が起っていたのかを連想してしまうからだ。
それは北部同盟の「北イタリア独立運動」である。
ご存じの通り、南北イタリアでは経済格差が大きい。北はリッチで、南はビンボーである。
北の諸州は、自分たちの納めた税金が南の「のらくらもの」たちの生活保護や年金に費消されるのはがまんができないと言い出して、リッチな北イタリアだけの独立を主張した。
これが一大政治運動となり、現在ではベルルスコーニ政権の与党として、与党第三党の議席数を持つまでに至っている。
北部同盟の基本的な思想はひとことでいえば「地域主義」である。
(略)
マクドナルドのハンバーガーは間違いなくアメリカン・グローバリズムの食文化的な戦略にコミットしている(だから、アラブ・イスラム世界ではマクドナルドがテロの対象になったりする)、一方、マクドナルド化を批判する伝統的食文化愛好は地域主義、排外主義の戦略にそれと知らぬうちにコミットしている。
(後略)

この部分に目からうろこの感覚を覚えました。我が宮城県「食材王国みやぎ」と銘打ってスローフード運動を展開していますし、地産地消などといって、宮城にかぎらず多くの自治体がこうした運動を展開しています。しかし、頭ではわかるけど、うまく広がらないのは、まさにここに指摘されている点ではないでしょうか。つまり、地域主義が根元にあるからこそ、こうした運動が展開できる(それはファシズムなどに連なるようなものには限らないけど、でないと、それなりに世界的に展開している理由が説明できないような気がするので)。そうして考えれば、宮城の場合、あまり地域文化を大切にする場所ではないので(現在の行政は)、なんとなく食材だけをあつめてきてお金をつぎ込む、というようになっているような気がします。
まあ、行政が介在するとどうしても政治的な思想を排除する動きになるのは否めないのですが、日本の場合、そうでなくても政治的な思想を無視して現象をおいかけることが多いような気がします。その結果、食材王国のページをみてもわかるように、バジルを使った料理(って宮城の郷土食?)が紹介されるように、スローフードでもなんでもないような気がします。まあ、ヨーロッパのスローフード運動をそのまま真似することが困難なのは上記の説明の通りですし、別に日本的な展開をすることは結構なことなのですが、これでは単なる農業振興以上の広がりにはならないような気がします。
(あ、マクドナルドがご当地限定でご当地バーガーを出せば、それはフローフードになるってことか。)