戸倉半島の裏側へ

ruger2008-01-11

 本日は別件で十三浜地区へ。
 ここは調査で行っている戸倉半島の北側に接する場所になります。同じ半島の南側になるのですが、志津川湾に面している北側と比べると外洋から北上川の河口部という具合に海の様子はだいぶん違う場所でもあります*1
 で、主目的も早々に、話者が養殖をメインにされている漁師さんということもあり、ちょっと聞き書きを。
 環境条件が違うので、志津川湾内の養殖とは少し色合いが違いつつも、似たようなところもあり、大変興味深い話が聞けました。
 今回のメインはホタテ養殖を巡る話。志津川湾で以前聞いた話では、志津川辺りが水温的にぎりぎりの線であるというものでした。そのため、ここ数年は温度が高めで斃死する量が多く大変だというもの。南と行っても数キロのここでもホタテ養殖をやっているということで、大丈夫ですか?と質問したところ、ここも同様に厳しい状況にあるとのことでした。まぁ、ここまでは想定の範囲内だったのですが、どうも暖水の問題はそう単純ではないようです。岩手でも同様の事態に陥っているとのこと。そこから、その回避策という話になり、これはここで書ける話ではないのですが、養殖技術の伝播という面で大変おもしろい話に広がりました。
 水産業は巨大な産業ですから、それに関する科学的な調査研究は我々人文系に比べて遙かに大規模に進められています。漁師さんはその成果から必要な情報を、試験場や漁協などから得て自分の仕事に活かします。その過程では、漁師さん個々の経験を加味しながら、得た情報を解釈することで実践となっています。ここには当然落差があり、民俗はその落差から生まれるといえます。
 ただ、調査者である私たちはどうしても前者の部分の勉強はおざなりになりがちですから、持っている情報は総じて漁師さんの解釈だけになりがちです。当然話者によって答えが違うことも多々あり、それは「矛盾」という形で処理することになります。この問題は生業系の研究にはすべからく当たる話ですが、なかなか難しいところです。もちろん水産研究の勉強に力を入れすぎて後者がおざなりになると本末転倒ですしね。
 などと、つらつらと思いながら、このおもしろい話を聞いていました。いや、生業研究は奥が深いですね。
(写真はおみやげにもらったホタテの稚貝。みそ汁の具になります。ところで、写真でわかりますかね。ホタテにフジツボが付いています。これ、そのままにすると生長したとき貝殻がゆがむ原因になるそうで、小さい段階で一つ一つ手で取っていかないといけないそうです。いや、この話、聞いたときにはそういうもんだなと思っていましたが、実物を見てその大変さに驚きです)

*1:まぁ、半島というのはそういう性格を持つのですが