熊野堂神楽と舞楽

ruger2006-04-16

 名取の熊野三山については既に書いていますが(id:ruger:20060309など)、本日は、高舘熊野神社=熊野新宮の春祭りの見学です。ここの売り?は神楽と舞楽の上演となります。
 神楽は本来10月の秋季祭礼に演ぜられるもので、研究上十二座神楽とされるように、12の演目*1からなっています。春季祭礼ではこのうち数番のみ上演されます。
 ここの神楽の特徴は社家の神楽ということになります。宮城県の神楽の場合は法印神楽に代表されるように、修験者が伝えてきた神楽が多く、少なくとも近世においても神社に奉仕する社家のみによる神楽はほとんど伝えられていません。そうした中で、熊野堂神楽は現在も特定の社家のみで伝えられてきています。
 神楽は上記のように十二座神楽の一つとされ、埼玉県の鷲宮催馬楽神楽を元とし、東日本に広く伝わったものの一つと考えられています。宮城県では仙台以南に多くみられ、特にこの熊野堂神楽は最も古い神楽の一つとされ、ここから各地の神楽が伝えられたとのことです。
 また、この神楽で使用する面の多くが神楽面ではなく、舞楽面を使っていることでも知られ、写真は種蒔舞という楽曲ですが、ここ使われる面も舞楽の納曽利面です。しかも中世のもので、宮城県内では最古級の面でもあります。ということで、仮面史の面でも重要な舞を今に伝えています。

 境内は写真のようなかんじで、左側の拝殿の前に池が広がり、写真右の赤い屋根の建物が常設の神楽殿で、ここで春秋に神楽が上演されています。そして、春の祭礼では、池中に仮設の舞台が設けられ、舞楽が上演されます。
 この熊野堂舞楽、上記のように神楽に舞楽面が使われているように、由緒のあるものですが、少し異なった経緯をもっています。
 現在は舞楽も神楽を担う社家衆が行っており、楽器は胴太鼓と笛からなっています*2。更には、この舞楽、以前は山形県高畠町にある安久津八幡神社から楽師が来て演ぜられていたとされています。この安久津八幡、自社では現在も上演されていますが、そのほか南陽市の宮内熊野大社でも上演されていて、古くはここ名取など各地で舞楽の上演をしていた楽師集団を擁する神社だったようです。ということで、現在のように社家による舞楽は比較的新しいもののようです。
 そのためもあるのか、こちらの舞楽、現在は6番上演されていますが、面を使う舞は陵王と二の舞の2演目だけとなっています。この面も最近新調したものだそうで、神楽との対比がとても気になります。さらに気になるのは、神楽面として流用されている舞楽*3を使う舞はないのですね。このあたりに神楽に舞楽面が使われている由来があるような気がしますが…、うがちすぎですかね。
(本日の運転距離26km^^;)
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追記
kanjisinさんがすてきな写真と演目をアップされています。併せてどうぞ
http://d.hatena.ne.jp/kanjisin/20060416

*1:番外として獅子舞1番はありますが

*2:舞楽は定義としては雅楽に舞が加わったものなので、楽器としては笙などの楽器が使われるのが一般とされています

*3:前記納曽利のほか、散手、貴徳などがあります