国立民族学博物館

 13年ぶりにきました。当然以前の記憶はほとんどないのですが、壁一面に資料が取り付けられていた記憶があります*1。で、リニューアルがあったという話を聞き、ぜひ一度見たいと思っていました。
 現在の常設展示についてはmournbladeさんが書かれているように、主眼は先住民権など政治色強い部分や、いわゆる「伝統」にこだわならない現在の生活に関する展示が大きく扱われている印象でした。東南アジアの展示では乗合バスや輪タクなどがずらっと並んでいたり、韓国で「伝統的」な玩具の横に現在の玩具としてマンガが並んでいるという具合です。
 先住民の権利にかかわる部分はここ20年ほど大きくクローズアップされている人類学上の問題もありその意図は理解できます。ただ、この問題はアボリジニイヌイットなど開拓された先進国で起こっている民族の問題なのですが、根っことしては民族紛争などと同じように思います。そうした意味では文化人類学民族学が扱って来た「民族」を対象にして、現在を扱おうとしている以上、そうした点にもある程度説明をしていく必要があるように感じました。
 もう一つ興味を引かれた展示に、特集展示の「研究者が見誤った伝統?」というものがありました。これは従来まで考えられて来た機織り道具の展開過程に誤りがあったということを検証するものです。同業者でもあり、学芸員の実名で反省?を表明するのは重要なことだとは思いますが、はたして展示として見せることに意味があるのか、疑問に思いました。
 展示そのものも「見誤った」部分が何なのかが、なかなか分かりにくく、説明をおって行くのが非常に苦労した印象です。自分はアイヌについて興味があるので、それなりに楽しめましたが、あまり関心のない人がこの展示を見たとき、良く分からないけど「見誤った」ことしか印象に残らいのかな、と思いました。たぶん理解としても逆コースからみたほうが理解し安かったような気がしますし、実際民博の展示は順路が分かりにくいので、自分は逆回りしたのではないか、という錯覚をしてしまいました。
 こういう問題を明確に表明したことはすばらしい事だとはおもいますが、その表明のし方としては、論文や一般向けのニューズレターなど、博物館の表現する場が展示に限定されいる訳ではないことを考えれば、一番目にされ安い展示を使う時の表現や見せ方はもう少し検討できるのかも知れません。もちろん、こうした展示は恐らく初めての試みですし、現在のみんぱくが進めている”アグレッシブ”な展示として、好意的見ることはできるのですが。
 それにしても、うわさどおり、最近の民博は刺激的ですした。それは同業ということ抜きに、多くの人に見てもらい、伝わるものがある展示を追求していることが伝わってくる博物館だと感じました。
 行ってよかったです。

*1:この当たりについてはmournbladeさんもお書きになっている通りですし、現在もそうで、資料をじっくり見ようとすると疲れました。