染の型紙

 反物の染め方に型紙を使う染め方を知っていますか?
 この型紙、江戸時代以降、各地の染屋で使われ、現在も蔵の中などに残っていることが多くあります。本日お越しのお客様で、自力で先祖伝来の型紙を整理されている方がいらっしゃいました。1300枚もの型紙をスキャンしてこんど報告書を出されるそうです。
 さらに、ご自身でサイトを立ち上げ、型紙を公開されています。
http://www.geocities.jp/somekatagami/
 是非、お立ち寄りいただくとともに、そのデザインや技術をご覧ください。
 型紙の製作については一朝一夕に書けるものではないのですが、完成品を見ていただくだけでもすごさはわかっていただけると思います。また、型染めでは”追っかけ”と呼ばれる、複数の型紙を使って余分な部分を消す技術があります。型紙だけを見てもわかりにくいのですが、こちらのサイトをみると、その技術も併せて知ることができます。


 私自身、就職してから型紙の存在を知ったのですが、特に江戸時代の型紙はほんとうにすばらしい物があります。
 本日も話していて、そうそう、ということになったのですが、こちらの方もこの型紙を博物館に寄贈しようと考え、各地をまわったのだが、民俗系では「こういう美術的なものは…」といわれ、美術館では「こういうのは民俗資料館がよいですよ」といわれ、困っている、とのこと。確かに博物館の世界でもここ30年ほど一部で注目はされていますが、まだまだ知名度は低いようです。
 染屋さんは各地に必ずあり、多くが型染めをしていたので、全国では何十、何百万枚もの型紙が流通していましたが、それもどんどん姿を消していくように思います。
 これも今日知ったのですが、かのシーボルトも数十万枚の型紙をヨーロッパに持ち帰ったといわれているそうですし、1870年代にはイギリスやフランスで図録が刊行されていたそうです。欧米人はそのすごさをすぐに理解したようですが、日本では戦後、1960年代に入りようやく注目され始めた、というしろものでもあります。
 貴重な文化財です。もし見つけたときは大切に保存していただきたいと思います。