ワラ靴復活

地域振興か、というと、難しいのですが、毎日新聞にこんな記事が掲載されていました。

田尻町でワラ靴復活 技術伝承、主役は高齢者−−映画の小道具受注が契機 /宮城
 田尻町の地域起こし集団「たじり古代稲生産組合」が19日、本格的なワラ靴作りに取り組み始めた。軌道に乗れば全国的に数が少なくなったワラ靴作りの技術伝承の地になりそうだ。
 同組合のクラフト部会(15人)は2年前から、古代稲の丈夫な茎で民芸ワラ細工を作ってきた。今年早々、東京都世田谷区の小道具リース会社から、北海道を舞台にした吉永小百合さん主演の映画「北の零(ゼロ)年」でワラの雪靴を使いたいと依頼が舞い込んだ。部会員の高橋房雄さん(79)が昔覚えた技術を思い出して作り、2足送った。
 古代米酒作りで付き合いのある加美町の酒造会社社員が、それを見て「立派な作り。今秋の酒の仕込み時期までに10足欲しい」と注文した。酒室は高温で、ゴム長靴は足が蒸れて使えない。これまでは県内のワラ細工職人に依頼していたが、高齢化で入手困難になっていたという。
 同組合の澤口健一事務局長(54)は、ワラ靴作りはクラフト部会の高齢者の生きがいをより大きくすると、製作の主役にすえた。ワラ靴の入手先に腐心する酒造会社は少なくなく、同組合は東北一円の酒造会社を対象に注文を取る。19日は、町内の作業場で10人余りの部会員が高橋さんの手ほどきで靴底部の編み上げに挑戦した。【小原博人】毎日新聞 2004年4月20日

宮城県田尻町は、なかなか興味深い町で、民俗調査に関してはそれほどおもしろい事例が報告されている場所ではなく、どちらかというと「普通の」農村、ということになるのですが、一方で、ほとんどの場所で廃絶した行事を今も活発に行ってることがあり、「あなどれない」場所でもあります。
この記事には前段があり、先般、田尻町古代米を使った日本酒の販売を開始したというニュースが流れていました。その記事は丁寧に読んでいなかったのですが、「たじり古代稲生産組合」というのがたぶん、この日本酒を作る活動と関わるのだと思います。
藁を利用した細工物は、「民芸品」として作られることが多く、各地で製作されていますが、こうした藁靴ではないと、という品は珍しいとともに、実際に利用されるために製作されるというのは、単に見た目だけではなく、作り込む必要があり、技術の保持という点から重要な気がします。たぶん、忘れられそうな技術というのは多々あり、そうした中には、今回の醸造に利用される藁靴のようなものもいろいろあるのかな、と思います。地域に保持される技術をすくい上げるとき、たんに技術を残すのではなく、「○○のために」技術を残す、という方向に持っていくことが、よりよい技術の保持になるのかな、と思わせる記事でした。